小型バイオマス発電投資の事業性は?
小型バイオマス発電は理論上の表面利回りは数十パーセントを超えるので、事業化を目指す会社は多いのですが、結局殆ど挫折します。日本中で有象無象の案件が進んでいたのは知っていますが、現時点で実現に至ったのは極少数です。
その原因は、燃料材の確保が困難、ファイナンスが困難、そして発電機の選定が困難、という3点になります。
燃料材の確保は、さらに原材料の確保、そして加工材の質の確保という問題があります。
原材料を確保するには、各地域の森林組合や木材業者などと交渉しなくてはいけないですが、まずここが一筋縄ではいかないことが非常に多いです。地元の政治家や団体など色々な登場人物の思惑が絡まって、利害調整に多大な苦労を要します。
そして仮に原材料を確保できたとしても、今度は燃料材として加工しなくてはならず、日本は湿度が高いため、乾燥させて質の高い燃料材にするのに設備投資が必要で、手間暇とコストがかかります。
ファイナンスは、金融機関対策、そして木材供給会社対策、を行う必要があります。
ピュアに事業自体を担保にするプロジェクトファイナンスを実行出来る金融機関は極めて限定的で、実際は事業体の与信を当てにした「なんちゃってプロファイ」となります。
その場合、地元の利害関係の集合体のような事業体に金融機関好みの信用力があることは稀で、自治体や商社などに間に入ってもらうことになり、さらに利害関係者が増えることで、事業化は遠のきます。
また金融機関は融資の条件として、発電期間中の確実な木材供給を担保するため、供給出来ない場合の損害を木材供給者に補填させるなど、様々なコべナンツを要求してきますが、それを呑むことができる木材供給者は極めて限定的です。
そして、それらの問題を全てクリアしても、そもそも採算に合う発電効率の小型バイオマス発電機がほとんどない、ということがあります。
発電効率の問題、発電の質の問題もあり、熱電併給じゃない限り経済性が合わないため、発電所の近隣で熱の販売先も確保しなくてはならないのです。
これらの問題を全てクリアーして実際に事業化に漕ぎ着けても、想定通りにいくケースは決して多くないというのが現状です。